奈良手の外科研究所



1965(昭和40)年7月、労災事故で左母指を切断した28歳の男性に対し、世界で初めて再接着に成功したのが若かりし頃の奈良県立医科大学整形外科学名誉教授・玉井 進先生と故小松 重雄先生で、「玉井・小松の母指再接着術」として世界中の整形外科・形成外科の教科書や論文にもそのお名前を見ることができます。


当院の田北武彦名誉院長も奈良県立医科大学在職時には、玉井先生から厳しいご指導をいただいたそうです。当院はその教えを受け継ぎ、日本手外科学会認定研修施設となっており、奈良から始まり世界に広がった高度なマイクロサージャリー(顕微鏡を用いて血管や神経を修復したり、複合組織を移植したりする手術)を行うことが可能です。


この度、当院に「奈良手の外科研究所」を開設し、玉井 進名誉教授に所長として就任していただきました。さらなる研究により手の外傷の治療に貢献してまいります。

【手の外科とは】

手の外科とは、肘関節から手指までの上肢が対象となる診療科です。各種の外傷による骨折・脱臼・捻挫はもとより筋肉・腱断裂、神経・血管損傷、手・指・前腕部の痛みやしびれ(知覚・運動麻痺)、変形、機能障害などをきたす疾患の診断・治療・リハビリテーションを行います。

【代表的な対象疾患(症状) 】

・ばね指(指の曲げ伸ばしの際に、痛みがでたり引っかかったりする腱鞘炎)
・手根管症候群(手首の内側にある手根管というトンネルで正中神経が圧迫されてしびれや痛み、運動障害を起こす病気)
・ガングリオン(良性の皮下腫瘤)
・へバーデン結節(指の先端の関節の変形や痛みが出る病気)
・ブシャール結節(指の先端から2番目の関節の変形や痛みが出る病気)
・デュプイトラン拘縮(手掌の腱膜が分厚く結節となり、指が曲がったまま伸ばせなくなる病気)
・ド・ケルバン病(手首の親指側にある長母指外転筋と短母指伸筋の炎症による腱鞘炎)
・肘部管症候群(肘の内側部分で尺骨神経が圧迫され、小指側がしびれたり手の筋肉が萎縮して運動麻痺が起こる病気)
・野球肘(野球少年によくみられる肘関節の痛みと運動障害)
・テニス肘(肘の外側または内側に痛みがあり、テニスをする人に多い)
・先天異常(多指症、合指症、先天性絞扼輪症候群など)
・各種の腫瘍など

【検査・他医への紹介について】

治療にかかわる検査について
・画像検査
 単純X線写真/超音波検査/CT検査/MRI検査/その他
・神経伝導速度検査
・日常生活動作の評価など

セカンド・オピニオン
当院に通院されていて、「セカンド・オピニオン」のご希望がございましたらご遠慮なくお申し出ください。 紹介状なしに行かれますと正確な情報が伝わり難く、かえって不利な結果を招く場合がありますので、患者さまの資料と共に紹介状を書かせていただきます。


当研究所は近畿地方や全国的に、さらに世界中の手の外科専門家と連携・紹介を行っています。近畿地方には、手の外科を専門にする整形外科医や形成外科医が多く、いずれも日本手外科学会傘下の「近畿手の外科症例検討会」や「奈良手の外科懇話会」などの勉強会の仲間たちです。また全国的には、北は北海道から南は沖縄まで各地域に専門家がおり、ご希望に応じてどちらにでもご紹介いたします。さらに世界中いたるところに友人の専門家がおりますので、必要に応じて対応できますし、外国からも外国旅行中に怪我した方を当研究所あてに紹介してくる場合もあります。

【所長紹介】

玉井 進(たまい すすむ)
奈良県立医科大学整形外科学名誉教授
日本整形外科学会名誉会員
日本手外科学会名誉会員ならびに相談医(初代理事長)
日本マイクロサージャリー学会名誉会員(第1回会長)
米国手外科学会名誉会員
奈良手の外科懇話会世話人

2010年6月12日に東京で開催された国際外科学会日本部会「International College of Surgeons-Japan Section」において「Hall of Fame」(名誉の殿堂入り)顕彰の栄誉に輝きました。
この顕彰制度は、日本の外科分野のなかで国際的な業績を有する者に与えられます。ここに掲げたものと同じ銅板が、米国のシカゴ市にある国際外科学会外科歴史博物館内の「日本外科殿堂」に飾られています。玉井先生の業績は顕微鏡下で微小血管や神経の縫合を行う技術を用いて、1965年に世界で初めて切断母指再接着成功、1968年に犬における遊離筋肉移植術の開発、1976年に完全切断陰茎再接着成功などが評価されたものです。



 また2016年1月1日、切断母指最接着術の成功から50周年を記念し、奈良県立医科大学附属病院に「玉井 進記念四肢外傷センター」が開設されました。奈良県立医科大学附属病院の正面玄関ならびに附属図書館ロビーに玉井先生の業績が展示されています。



 玉井 進所長からのメッセージ

私は、平成12年3月をもって奈良県立医科大学整形外科学教授を退職しましたが、その当時は私の専門である手の外科を標榜している病院が奈良市を中心とする北和地区になかったので、学園前の西奈良中央病院に「奈良マイクロサージャリー・手の外科研究所」を開設しました。それから6年の間、奈良県はもちろん大阪府や京都府からも患者さんがおみえになり、年間500例を越える手術例を有する手の外科センターに発展しました。
また、平成18年4月からは奈良公園中央病院に移って「奈良手の外科研究所」を継続し、平成19年11月に新築移転した奈良西部病院におきましても引き続き手の外科診療を行い、外来診療や手術、リハビリテーションを通じて臨床研究を行って参りました。
平成29年4月から当院の田北武彦理事長のご厚情により、玉井 進所長と中村敏夫巳医師を含めた「奈良手の外科研究所」としてこちらの病院に移設させて頂き、その業務を継続できることになりました。何か手の症状でお困りの方はぜひご来院下さい。

 プロフィール

昭和34年3月 : 奈良県立医科大学卒業
昭和35年7月 : 医師免許取得
昭和39年3月 : 医学博士の学位授与
昭和39年5月 : 奈良県立医科大学附属奈良病院整形外科助手
昭和40年4月 : 奈良県立医科大学附属病院整形外科助手
昭和42年4月 : Department of Surgery, Medical University of South Carolina, Charleston, South Carolina, U.S.A. にてResearch Fellow
昭和45年2月 : 奈良県立医科大学整形外科学講師
昭和57年4月 : 奈良県立医科大学整形外科学助教授
昭和64年1月 : 奈良県立医科大学整形外科学教授
昭和64年1月 : 奈良県立医科大学リハビリテーション部部長(併任)
平成6年4月 : 奈良県立医科大学附属看護専門学校校長(併任)
平成11年4月 : 奈良県心身障害者リハビリテーションセンター所長(兼任)
平成12年3月 : 奈良県立医科大学定年退官
平成12年4月 : 奈良県立医科大学整形外科学名誉教授
平成12年4月 : 奈良マイクロサージャリー・手の外科研究所所長(西奈良中央病院内)
平成18年4月 : 奈良手の外科研究所所長(奈良西部病院内)
平成29年4月 : 奈良手の外科研究所所長(田北病院内)

 学会活動

平成5年4月〜平成9年6月 : 日本整形外科学会認定医試験委員長
平成10年9月〜平成11年10月 : 日本整形外科学会第14回基礎学術集会会長(奈良市)
平成12年4月 : 日本整形外科学会名誉会員
平成9年5月〜平成10年5月 : 第41回日本手外科学会会長(大阪市)
平成11年5月〜平成12年5月 : 日本手外科学会理事長(初代)
平成12年5月〜 : 日本手外科学会名誉会員
昭和49年9月 : 日本マイクロサージャリー学会第1回学会会長(橿原市)
平成7年10月〜平成9年11月 : 日本マイクロサージャリー学会理事長
平成12年8月 : 日本マイクロサージャリー学会名誉会員
昭和58年6月〜昭和60年7月 : International Society of Reconstructive Microsurgery(ISRM)第8回学会President(パリ市)
平成4年6月〜平成6年10月 : International Microsurgical Society(IMS)第12回学会President & Chairman(奈良市)
平成13年11月〜現在に至る : World Society of Reconstructive Microsurgery(WSRM), Honorary Member
昭和56年2月〜現在に至る : American Society for Surgery of the Hand, Honorary Member
平成3年9月〜現在に至る : American Society for Reconstructive Microsurgery, Corresponding Member
平成11年3月〜12年8月 : Asian-Pacific Federation of Societies for Surgery of the Hand(APFSSH), 第3回学会President(Chennai)

 賞罰ならびに栄誉

平成5年4月〜平成9年6月 :昭和56年2月 : 36th American Society for Surgery of the Hand –Las Vegas “Founder’s Lecturer” に指名され講演を行う
平成12年4月 : 日本整形外科学会「学会賞」を授与される
平成12年10月 : 55th American Society for Surgery of the Hand – Seattle “International Guest Lecturer” に指名され講演を行う
平成17年3月 : International Federation of Societies for Surgery of the Hand (IFSSH)—Sydney 「Pioneer of Hand Surgery」顕彰の栄誉に輝く
平成22年1月 : The American Society for Reconstructive Microsurgery (ASRM) –Boca Raton, Fl. “Harry J. Buncke Lecturer” として講演を行う
平成22年6月 : The International College of Surgeons(ICS)– Japan Section「Hall of Fame名誉の殿堂」顕彰の栄誉に輝く