奈良手の外科研究所


 1965(昭和40)年7月、労災事故で左母指を切断した28歳の男性に対し、世界で初めて再接着に成功したのが若かりし頃の奈良県立医科大学整形外科学名誉教授・玉井 進先生と故小松 重雄先生で、「玉井・小松の母指再接着術」として世界中の整形外科・形成外科の教科書や論文にもそのお名前を見ることができます。


 当院の田北武彦名誉院長も奈良県立医科大学在職時には、玉井先生から厳しいご指導をいただいたそうです。当院はその教えを受け継ぎ、日本手外科学会認定研修施設となっており、奈良から始まり世界に広がった高度なマイクロサージャリー(顕微鏡を用いて血管や神経を修復したり、複合組織を移植したりする手術)を行うことが可能です。


 2017(平成29)年4月から、当院に「奈良手の外科研究所」を開設し、玉井 進名誉教授に所長として就任していただきました。さらなる研究により手の外傷の治療に貢献してまいります。

【手の外科とは】

 手の外科とは、肘関節から手指までの上肢が対象となる診療科です。各種の外傷による骨折・脱臼・捻挫はもとより筋肉・腱断裂、神経・血管損傷、手・指・前腕部の痛みやしびれ(知覚・運動麻痺)、変形、機能障害などをきたす疾患の診断・治療・リハビリテーションを行います。

【代表的な対象疾患(症状) 】

・ばね指(指の曲げ伸ばしの際に、痛みがでたり引っかかったりする腱鞘炎)
・手根管症候群(手首の内側にある手根管というトンネルで正中神経が圧迫されてしびれや痛み、運動障害を起こす病気)
・ガングリオン(良性の皮下腫瘤)
・へバーデン結節(指の先端の関節の変形や痛みが出る病気)
・ブシャール結節(指の先端から2番目の関節の変形や痛みが出る病気)
・デュプイトラン拘縮(手掌の腱膜が分厚く結節となり、指が曲がったまま伸ばせなくなる病気)
・ド・ケルバン病(手首の親指側にある長母指外転筋と短母指伸筋の炎症による腱鞘炎)
・肘部管症候群(肘の内側部分で尺骨神経が圧迫され、小指側がしびれたり手の筋肉が萎縮して運動麻痺が起こる病気)
・野球肘(野球少年によくみられる肘関節の痛みと運動障害)
・テニス肘(肘の外側または内側に痛みがあり、テニスをする人に多い)
・先天異常(多指症、合指症、先天性絞扼輪症候群など)
・各種の腫瘍など

【検査・他医への紹介について】

治療にかかわる検査について
・画像検査
 単純X線写真/超音波検査/CT検査/MRI検査/その他
・神経伝導速度検査
・日常生活動作の評価など

セカンド・オピニオン
 当院に通院されていて、「セカンド・オピニオン」のご希望がございましたらご遠慮なくお申し出ください。 紹介状なしに行かれますと正確な情報が伝わり難く、かえって不利な結果を招く場合がありますので、患者さまの資料と共に紹介状を書かせていただきます。


 当研究所は近畿地方や全国的に、さらに世界中の手の外科専門家と連携・紹介を行っています。近畿地方には、手の外科を専門にする整形外科医や形成外科医が多く、いずれも日本手外科学会傘下の「近畿手の外科症例検討会」や「奈良手の外科懇話会」などの勉強会の仲間たちです。また全国的には、北は北海道から南は沖縄まで各地域に専門家がおり、ご希望に応じてどちらにでもご紹介いたします。さらに世界中いたるところに友人の専門家がおりますので、必要に応じて対応できますし、外国からも外国旅行中に怪我した方を当研究所あてに紹介してくる場合もあります。